茅ヶ崎南湖の速水御舟アトリエ~その源流を探る

所在 茅ヶ崎市南湖四丁目

【土地の系譜】

国の重要文化財 『炎舞』をはじめ数々の名画の作者で知られる日本画家 速水御舟(1984年~1935年)が活動の拠点としていた目黒のアトリエが御舟の没後、茅ヶ崎市南湖の土地に1955年(昭和30年)に移築される。

呉服商であった吉田弥一郎(1857-1924)は多くの若手画家を援助し目黒の敷地内に住まわせていた。
御舟は1921年、吉田の四女・弥(いよ)と結婚し目黒に住居を移し、敷地内のアトリエを拠点とし活動する。
御舟の亡き後、妻・弥は、御舟の別荘であった茅ヶ崎市南湖の土地に移り住み、御舟が使用していたアトリエも移築される。

【調査経緯】

土地が相続により曾孫の代に移り、相続税の支払いのため土地が売却される可能性があることを知り、アトリエの実地調査を相続人に願う。御舟の次女・和子の夫である吉田耕三は美術評論家で魯山人の弟子でもあり、多数の美術品コレクションを有する。コレクションが茅ヶ崎美術館に寄託された経緯から、美術館から相続人へアポイントを取る。

【建物概要】

速水御舟のアトリエが1955年に移築されたものであることを照査。これまでアトリエの保存のため、相続人との折衝や行政他各方面への啓蒙活動を行ってきた。
南側敷地は売却され分譲地となる。

構造 木造平屋建
屋根 金属板葺き、切妻屋根・下屋付
外壁 押縁下見板貼、一部カラー鉄板貼
間口 三間 × 奥行 四間半
規模 13.5坪(44.6㎡)

開発前の航空写真 googleより

1960年代航空写真 国土地理院より

現在の航空写真 googleより

【調査内容・所見】

<図面>(当会作成)

 

 

弊串に『昭和30年10月1日上棟』 速水家と記載
構造材は転用されたものが多い。束には、表面を削って再度番付を書いた痕跡が見られる。

室内の天井高は約3m
数寄屋風の意匠(下地窓・火灯窓・竹材の使用)

写真左から
掛け障子、下地窓、火灯型 刳抜き棚および竹材の使用(3畳)、下地窓(便所出窓)

古い写真との比較

参考資料 WABI、別冊太陽(遺族の対談により、移築したことがや思い出が記載されている。)

火災保険特殊地図に記載された目黒の御舟居宅と現在位置の比較

茅ヶ崎の文化的遺産としての速水御舟アトリエについての啓蒙活動

アーカイブ